「透明マントを求めて」, 雨宮智宏

 

「透明人間になってみたい。」誰しも一度は考えたことがあるはずだ。その証拠に、被ることで透明になることのできる『透明マント』が、古今東西様々な時代の文献に登場する。その、長らく実現されることのなかった夢の技術に、今、手が届こうとしている・・・。ただし、ここに至る道程は平坦なものではなく、また、登場人物も多い。ストダーの「マジックショー」(第1章)、ロッキードの「ステルス機」(第2章)、ベセラゴの「負の屈折率」(第3章)、リーマンとアインシュタインの「曲がった空間」(第4章)そして、スミスの「メタマテリアル」(第5章)。本書は、透明マントを探し求めてきた多くの人物の活躍を描いた群像劇を通じて、透明マントの科学的な背景を紹介するものである。

 

【印象的な表現や文章】 

「レンズで集光した太陽光は、焦点の位置(紙上)では光が”点”になる。しかし、この”点”は本当の意味での点ではなく、ある広がりを持っている。どんな高性能のレンズを使ったとしても、この”点”の大木あしゃ光の波長(高速を周波数で割ったもの)程度より小さくはならない。これを回折限界といい、空間を伝わる光はこれよりも小さく絞ることができない。」(P.126)