「沈黙」, 遠藤周作

 

島原の乱が鎮圧されて間もないころ、キリシタン禁制のあくまで厳しい日本に潜入したポルトガル司祭ロドリゴは、日本人信徒たちに加えられる残忍な拷問と悲惨な殉教のうめき声に接して苦悩し、ついに背教の淵に立たされる・・・。神の存在、背教の心理、西洋と日本の思想的断絶など、キリスト信仰の根源的な問題を衝き、<神の沈黙>という永遠の主題に切実な問いを投げかける書下ろし長編。

 

【印象的な表現や文章】 

「人間とは妙なもので他人はともかく自己だけはどんな危険からも免れると心の何処かで考えているみたいです。」(P.51)

 

「デウスは万物を善きことのために創られた。この善のために人間にも智慧というものを授けられた。ところが、我々はこの智慧分別とは反対のことを行う場合がある。それを悪というだけだ。」(P.141)

 

「悪人にはまた悪人の強さや美しさがある。」(P.181)

 

「敗北したものは、弁解するためにどんな自己欺瞞でも作りあげていくのだ。」(P.232)