「言ってはいけない -残酷すぎる真実-」, 橘玲

 

この社会にはきれいごとがあふれている。人間は平等で、努力は報われ、見た目はたいした問題ではない― だが、それらは絵空事だ。往々にして、努力は遺伝に勝てない。知能や学歴、年収、犯罪癖も例外でなく、美人とブスの『美貌格差』は約三六〇〇万円だ。子育てや教育はほぼ徒労に終わる。進化論、遺伝学、脳科学の最新知見から、人気作家が明かす『残酷すぎる真実』。読者諸氏、口に出せない、この不愉快な現実を直視せよ。

  

【印象的な表現や文章】 

「しかしここには、私たちの社会がどうしても認めることのできない『残酷すぎる真実』が隠されている。それは、子供の人格や能力・才能の形成に子育てはほとんど関係ない、ということだ。」(P.212)

 

「人格形成においてこれ以外の要素がないという意味で、『遺伝』『共有環境』『非共有環境』の3つが『わたし』をつくっている(これは定義の問題で、『わたし』から『遺伝』を引いたものが『環境』、『環境』から『共有環境』を引いたものが『非共有環境』だ)。」(P.218)

 

「ヒトは社会的な動物で、集団から排除されれば一人では生きていけないのだから、アイデンティティというのは集団(共同体)への帰属意識のことだ。」(P.236)

 

「仲間が不在のまま育ったサルは、明らかに異常行動が目立った。同様に英才教育を受けた神童も、幼少期に友だち関係から切り離されたことで自己をうまく形成することができず、大人になると社会に適応できなくなり、せっかくの高い知能を活かすことなく凡庸な人生を終えてしまうのだ。」(P.241)