「失敗を生かす仕事術」, 畑村洋太郎

 

安全な道が一転危険な道に---社会が大きく変わるときには、予測していなかった事態が次々とまわりで起こります。その際、状況に応じた対処ができずに思わぬ失敗を起こしてしまったり、また、適切な対処ができないまま失敗の被害を拡大させてしまうことも珍しくありません。ここ数年頻発している行政や企業の失敗は、まさにその典型のようなものです。・・・ここで起こっているのは、「最も安全な道」と信じられていたものが一転して「危険な道」になっているという状況の変化です。そのような現実を直視することなく従来の成功の法則に固執していては、未来に待ち受けている大失敗を避けることができないのは火をみるよりも明らかです。・・・誰もが認識する必要があるのは、いまの時代、「絶対安全な道はどこにも存在しない」ということです。それほど変化の激しい時代にいまの私たちは生きているのです。

 

【印象的な表現や文章】 

「一般的には実務経験の長い人は、失敗経験もあり、また他人の失敗を数多く見てきているので・・・この人たちは、一見すると『経験の豊富な頼もしい存在』という印象をまわりに与えていますが、実際はまったくそんなことはありません。自分が経験で得た知識にとらわれて、柔軟な発想ができなくなっているから変わる必要があるのに買われないので、私はこれを『偽ベテラン』と呼んでいます。偽ベテランのいちばんの問題は、自分の経験に基づくもの以外を絶対に認めないので、制約条件が変わって新しい状況に直面したときに、対応ができないことにあります。」(P.40)