「天地明察」 , 冲方丁

「天地明察(上)」

徳川四代将軍家綱の治世、ある「プロジェクト」が立ちあがる。即ち、日本独自の暦を作り上げること。当時使われていた暦・宣明暦は正確さを失い、ずれが生じ始めていた。改暦の実行者として選ばれたのは渋川春海。碁打ちの名門に生まれた春海は己の境遇に飽き、算術に生き甲斐を見出していた。彼と「天」との壮絶な勝負が今、幕開く---。日本文化を変えた大計画をみずみずしくも重厚に描いた傑作時代小説。第7回本屋大賞受賞作。

 

【印象的な表現や文章】 

「この国の人々が暦好きでいられる自分に何より安心するからかもしれない。戦国の世はどんな約束も踏みにじる。」(P.8)

 

「記憶力が本当に優れている者は、忘れる能力にも長けている。今日打った手のことなど晩に忘れ、翌朝に昨日の棋譜を眺めて新たに続きを考える。」(P.65) 

 

 

「天地明察(下)」

 

「この国の老いた暦を斬ってくれぬか」会津藩藩主にして将軍家綱の後見人、保科正之から春海に告げられた重き言葉。武家と公家、士と農、そして天と地を強靭な絆で結ぶこの改暦事業は、文治国家として日本が変革を遂げる象徴でもあった。改暦の「総大将」に任じられた春海だが、ここから想像を絶する苦闘の道が始まることになる---。碁打ちにして暦法家・渋川春海の20年に亘る奮闘・挫折・喜び、そして恋!

 

【印象的な表現や文章】 

「君主のために家臣と民がいるのではなく、家臣と民のために君主がある。」(P.124)

 

 

「私にとっての大事は、定石です。天地の定石に辿り着くために、人の定石を守るに越したことはありません。」(P.258)