「ザ・レトリック」, ジェイ・ハインリックス

 

「人柄」+「論理」+「感情」で相手を共感させ、「イエス」を引き出す1 アリストテレス、リンカーンからホームズまで歴代の達人たちに学ぶ、伝える極意。

 

【印象的な表現や文章】 

「その昔、レトリックはリーダーシップに欠かせないスキルであると考えられており、とても重要な知識として高等教育の中心に置かれた。」(P.20)

 

「歴史上最も偉大な弁論家キケロは、人を説得するのには3つの目的があると言った。易しいものから順に並べると次のようになる。・聞き手の感情を刺激すること ・聞き手の考えを変えること ・聞き手を行動へ駆り立てること」(P.42)

 

「未来のことを話すときと同じで、話をうまく運ぶためには、事実に固執していてはいけない。」(P.61)

 

「共感とは、聞き手の『パトス(感情)』に寄り添うことである。聞き手の気分を否認したり、否定したりしてはいけない。共感とは、関心を示すことにほかならない。」(P.79)

 

「履歴書を書くとき、まずは経歴を年代順に並べるのではなく、『エートス』別に記述してみよう。自分が働きたい会社のことを思い浮かべて、その会社が進む方向と自分が向いている方向が同じであることを説明し(徳)、会社で使える知識や経験を挙げ(実践的知恵)、チームのために懸命に働く人間であることをアピールしてみる(公平無私)。そのあとで、年代順に並べ直してみる。」(P.97)

 

「会社で人を説得したいなら、まずはその会社の『徳』に合わせて話を始めなければならない。つまり、企業風土に合わない基準に照らすのではなく、実務的であるとか利益につながるといった、企業風土に合った側面から話を展開しなければならないということだ。」(P.104)

 

「有能であるということは、説得力があるということだ。」(P.114)

 

「柔軟で賢いリーダーシップこそが、『実践的知恵』なのである。優れたリーダーは例外なく、こうした技能をもっている。どんなときでもルールを曲げない人には、それが欠けている。」(P.115)

 

「では『感情移入』と『共感』の違いは何だろう? 感情移入とは、正確に言えば、誰かの気持ち、あるいは感情を自分に取り入れることである。悲しんでいる子どもを見たら、自分も悲しくなる。楽しそうな子どもを見れば、自分も自然と微笑んでしまう。これに対して、共感とは、相手と同じ感情を抱きはしないが、その感情を完璧に理解することである。」(P.131)

 

「感情に訴える議論をするときは、シンプルに話すこと。激しい感情を抱いている人は、凝ったスピーチなどしないものだ。言葉は少ないほうがいい。情緒的に言うなら、言葉が少ないほうが、より感情を揺さぶる。」(P.135)

 

「精神医学者のフロイトは、相手を笑わせてやれば、その人の欲求がうまく解放されて『不安が軽減』すると語っている。」(P.159)

 

「話を始める前に、まずは聴衆が何を考えているのかを見極めることが大切だ。何を信じ、何に価値を置いているのか、共通してもっている考えは何かを知らなくてはいけない。聴衆が共通してもっている考えを、話のスタート地点にするのだ。」(P.171)

 

「たいていの場合、議論は、どちらが正しくてどちらが間違っているのかを決めるものではない。どちらが『より正しそうか』というだけである。」(P.258)

 

「いじめることは、善い心とのバランスをとるために、人間のDNAに組み込まれているんじゃないだろうか。意地悪で攻撃的なホモ・サピエンスが、哀れなネアンデルタール人に嫌がらせをして絶滅に追いやったというのも、容易に想像ができる。」(P.312)

 

「細かい部分について議論すると、相手が自分の意見を和らげる傾向にあることが、神経科学で証明されている。詳細を詰めていない意見ほど、極端になりがちなのだ。」(P.320)

 

「あなたの強みから話を始めることだ。事実でも論理でもいい。そして最も説得力のある言葉を、最初と最後にもってくることが大切だ。」(P.440)

 

「『もっと大きな声で話すこと』。これは、特に緊張しているときに効果がある。大きな声で話すことに意識を集中すると、自信に満ちた声で、リズミカルに語れるようになる。」(P.447)