「周作塾」, 遠藤周作

 

金持ちになれる、女にモテる、人生を豊かにする、ツキを呼ぶ---「読んでもタメにならない」とシャレながら、楽しい人生をおくるための機智溢れるヒントを満載して綴る長編エッセイ。諧謔とユーモアをたっぷり詰め込み、時代の風俗、生きるとは何かについてユニークなメッセージを熱く語る。文庫オリジナル。

 

【印象的な表現や文章】 

「自らの運のリズムが衰えたり、悪い月や日には積極的に攻勢に出ないように、とよく言われているが、そういう年や月にはただ、じっとしていないで運づきな人におぶさるハイエナ先方もあることを忘れてはいけない。」(P.50)

 

「女友だちは、たいてい自分の男友だちにたいして母性愛を持っている。だから彼女の迷惑にならぬ範囲で何かを頼めば、たいてい親身になって世話をしてくれるのである。」(P.75)

 

「ある心理学者が面白い実験をした。ダイスをやる時、心のなかで自分の欲する数字を念じつつ賽を投げた時と無造作に投げた時との目数が微妙に違うのである。もちろん最初の頃はそう変化は目だたない。しかし訓練を重ね、執拗に心に念ずることをくりかえしていると、その差は歴然と開いてくるというのだ。」(P.87)

 

「子供と二時間もいてみたまえ。退屈しない大人がいるだろうか。」(P.117)

 

「というのは結婚生活には陶酔感や情熱を引き起こす条件はまったくないからだ。陶酔や情熱が起きるためには男女が離れ離れでなくてはならない。ある程度の不安や苦しみや場外が絶えず二人の心になくてはならないのである。」(P.132)

 

「ある時期から私は無意識は意識より強力なものだということに注目しはじめた。意識は作りものだが無意識は本音だからだ。そして潜在力を持っているがその潜在力はなかなか表面には出てこない。表面に出てこないが無活動なのではなくてひそかに活動している。」(P.158)

 

「このように来る日も来る日も『してはいけません』と耳もとで聞かされてごらんなさい。人間は自信を失い、消極的になるのは当然である。私は多くの患者が社会復帰に憶病になっている理由がわかる気がした。」(P.159)