「オーデュボンの祈り」, 伊坂幸太郎

 

 

コンビニ強盗に失敗し逃走していた伊藤は、気付くと見知らぬ島にいた。江戸以来外界から遮断されている”萩島”には、妙な人間ばかりが住んでいた。嘘しか言わない画家、「島の法律として」殺人を許された男、人語を操り「未来が見える」カカシ。次の日カカシが殺される。無残にもバラバラにされ、頭を持ち去られて。未来を見通せるはずのカカシは、なぜ自分の死を阻止出来なかったのか?

 

【印象的な表現や文章】 

「人生ってのはエスカレーターでさ、自分はとまっていても、いつのまにか進んでいるんだ。乗った時から進んでいる。到着するところは決まっていてさ、勝手にそいつに向かっているんだ。だけど、みんな気がつかねえんだ。自分のいる場所だけはエスカレーターじゃないって思ってんだよ」(P.42)

 

「問題の先延ばし、これは人間だけが持っている悪い性分なのかもしれない。」(P.55)

 

「人は自分の苦痛から逃れるために、他人を売るだろう。売った側も結局のところ、その罪悪感で遅かれ早かれ壊れてしまう。」(P.192)

 

「楽しくないとか、悲しいことがあったから、なんて言って、やり直せねえんだ。だろ。みんな、一回きりの人生だ。わかるか? ・・・ だから、何があっても、それでも生きていくしかねえんだ。」(P.202)

 

「親なしで、まわりの住人に助けられながら生きてきたんだ。どこかしらは、ずれてくる。人間を形成するために一番大切なものは何かわかるか? ・・・ 親とのコミュニケーションだ」(P.214)