「幸福な食卓」, 瀬尾 まいこ

 

佐和子の家族はちょっとヘン。父を辞めると宣言した父、家出中なのに料理を届けに来る母、元天才児の兄。そして佐和子には、心の中で次第にその存在が大きくなるボーイフレンド大浦君がいて・・・。それぞれ切なさを抱えながら、つながり合い再生していく家族の姿を温かく描く。

 

【印象的な表現や文章】 

「他人じゃないと救えないものが直ちゃんにはある。きっと、同じように私にも。」(P.122)

 

「俺、仕事が早いんだ。基本的に働き者だし、要領がいい。で、職場でもどんどん仕事をこなすわけ。他の人の仕事だって手伝っていた。そしたら、早く済むし、もっといろんなことができる。そう思ったし、いちいちこの仕事は誰がやるとか決めずに協力し合えるのは理想だから。だけど、違うんだ。そんな理想は存在しない。最初はみんなありがたがってたけど、だんだん俺がやることが当たり前になってくる。すると、助け合うどころかすごくバランスの悪い職場になるんだ。俺はみんなの難波も仕事をする。みんなはそのうち、何もしなくなってしまう。そして、それが職場の常識になってしまう。みんなどこかで嫌だなって思ってるのに、常識になってしまったらなかなか崩せない。」(P.138)

 

「毎日決まった動きをしていたものがなくなる。それは人を不安にさせる。不安は人を動かすのだ。」(P.160)

 

「お前、正面から挑みすぎだぜ。同じ年代の奴を動かすのって、心底愛すべきお調子者か、尊敬せざるをえないカリスマ的能力を持つか、本気で強いか、バックに何か付いているか。」(P.177)