「秘密」, 東野圭吾

 

妻・直子と小学5年生の娘・藻奈美を乗せたバスが崖から転落。妻の葬儀の夜、意識を取り戻した娘の体に宿っていたのは、死んだはずの妻だった。その日から杉田家の切なく奇妙な”秘密”の生活が始まった。映画「秘密」の原作であり、98年度のベストミステリーとして話題をさらった長編、ついに文庫化。解説・広末涼子、皆川博子

 

【印象的な表現や文章】 

「ううん、わかってる。お父さんはバランス感覚があるのよ。むやみに人を恨んだりしない。あたしみたいに、筋違いなことで怒ったりしない」(P.182)

 

「・・・わからないかもしれないけど、自分の置かれている境遇に耐えられそうにない時には、誰か恨みや憎しみをぶつけられる相手がほしいものなのよ」(P.183)

 

「世の中には、素晴らしいものが本当にたくさんあるのよね。そんなにお金をかけなくても幸せになれるものだとか、世界観が変わっちゃうものだとかが簡単に手に入る。どうして今まで気が付かなかったのかなと思っちゃう」(P.222)

 

「・・・昔自分と文也との間に血の繋がりがないと聞かされた時、父親の気持ちになれるかどうかということばかり考えた。自分が愛する者にとって幸せな道を選ぶという発想がなかった・・・」(P.373)