「堕落論」, 坂口安吾

 

「日本は負け、そして武士道は滅びたが、堕落という真実の母胎によって始めて人間が誕生したのだ」生きよ、堕ちよ。堕ちること以外の中に人間を救う道はない、と説く「堕落論」。救われない孤独の中に、常に精神の自由を見出し、戦後の思想と文学のヒーローとなった著者の、代表的作品を収録。

 

【印象的な表現や文章】 

「私は弱者よりも、強者を選ぶ。積極的な生き方を選ぶ。この道が実際は苦難の道なのである。なぜなら、弱者の道はわかりきっている。暗いけれども、無難で、精神の大きな格闘が不要なのだ。」(P.89)

 

「思想とは、個人が、ともかく、自分の一生を大切に、より良く生きようとして、工夫をこらし、必死にあみだした答えであるが、それだから、また、人間、死んでしまえば、それまでさ、アクセクするな、と言ってしまえば、それまでさ。」(P.110)