「逃げる力」, 百田尚樹

 

会社から逃げる、人間関係から逃げる、目の前のピンチから逃げる・・・逃げることは、消極的で後ろ向きなことだと考えていないだろうか。実は逃げることは戦うことと同じ位積極的な行動である。戦う時に分泌されるホルモン「アドレナリン」は、逃げる時にも分泌されるのだ。本当に大切なものを守るために、戦っても勝ち目がない、得るものがないと判断したら、さっさと逃げるべきである。だからまず、自分にとって大切なものは何か、しっかり見定めなければならない---百田尚樹が動物や戦国武将の例も挙げながら、人生についての根本的な考え方を語る一冊。

  

【印象的な表現や文章】 

「もともと、日本人は、脳科学的に争いを好まない民族だそうです。だから、勝ち負けを決する経験を避ける傾向があるようですが、さらに最近は、それに、『負ける経験をさせない』学校教育の問題も加わってきています。」(P.54)

 

「沈みゆく船にしがみついても、溺れるのが先延ばしになるだけです。現実の海なら、海上保安庁や自衛隊が助けに来てくれるかもしれませんが、社会の『海』では誰も助けに来てくれません。」(P.74)

 

「『やればできる』の言葉を使っていいのは、過去にそれをやった実績がある人だけ。」(P.153)

 

「『好きな仕事』を追い求める生き方は、本当に好きな仕事が見つからなくなるような気がします。」(P.161)

 

「『パーキンソンの法則』という法則を聞いたことがないでしょうか・・・たとえば、『この仕事を午前中いっぱいで終わらせて』と言われると、午前中いっぱいかかるのですが、『一時間で終わらせて』と言われると、不思議なことに、一時間で終わるのです。」(P.164)

 

「人間は、『その人のために生きたい』『その人を守りたい』といえる存在を得るための努力を続けるべきである。」(P.217)