「生存者ゼロ」, 安生正

北海道根室半島沖に浮かぶ石油掘削基地で職員全員が無残な死体となって発見された。陸上自衛官三等補佐の廻田と感染症学者の富樫らは、政府から被害拡大を阻止するように命じられる。しかし、ある法則を見出したときには、すでに北海道本島で同じ惨劇が起きていた---。未曾有の危機に立ち向かう! 壮大なスケールで未知の恐怖との闘いを描く、第11回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作。

 

【印象的な表現や文章】
「死はどこにでもある。命を落とす者はそれに気づかない。生き残る者は臆病者で、戦死する者は間抜けなだけだ。ただそれだけの差だ。」(P.37)
 
「組織になじもうとする者には、真実に拘る意志よりも周りへの順応性を求められる。」(P.91)
 
「何を教えようと、所詮、豚は賢人にはなれない。」(P.194)

 

「平和とは哲学ではなく、パワーバランスで実現されるものだ・・・」(P.270)

 

「こいつはそんなケチな男じゃない。ただ、今の廻田はとんでもない重荷を背負わされている。たまに少しだけ周りへの思いやりが欠けることがあっても許してやれ」(P.351)

 

「人を想う心、人を気遣う心、それこそがこの難局に立ち向かう拠り所だ。どんな武器も、どんな軍隊も。強く折れない心に勝るものはない、・・・」(P.354)

 

「相手の欠点には目敏いが、己の未熟さには疎い彼らを、目の前の危機に対処できる器へ変えるには、無限の忍耐と膨大な時間が必要らしい。」(P.374)

 

「(君とは立場が違う。すべての可能性を検証してからでないと決断するわけにはいかない)いかにも考えが浅い。」(P.378)

 

「ある生物の生育面積における個体群の密度はその成長に影響を与え、これを密度効果と呼びます。同じく、個体数が多くなると互いの活動を邪魔したり、傷つけあったりする個体が生じてしまう。その現象が相互干渉です」(P.458)