「クライマーズ・ハイ」, 横山 秀夫

 

1985年、御巣鷹山に未曽有の航空機事故発生。衝立岩登攀を予定してた地元紙の遊軍記者、悠木和雅が全権デスクに任命される。一方、共に登る予定だった同僚は病院に搬送されていた。組織の相剋、親子の葛藤、同僚の謎めいた言葉、報道とは---。あらゆる場面で己を試され、篩に掛けられる、著者渾身の傑作長編。

 

【印象的な表現や文章】

「相手に絶対を求め、それが果たされないと知ると絶望的な気分に陥る。だから、人と距離を置く。自分に対して好意を覗かせる人間は警戒し、内面に立ち入らせまいとする。傷つきたくないからだ。」(p.18)


「同じ記者の原稿を二度殺したデスクについて行く兵隊など一人もいやしない。」(p.145)


「酔わなきゃ本音を言えない人を信じちゃだめだよ。そういう人は本当の人生を生きていないからね---。」(p.232)


「心とか、気持ちとかが、人のすべてを司っているのだと、こんな時に思う。」(p.425)


「生まれてから死ぬまで懸命に走り続ける。転んでも、傷ついても、たとえ敗北を喫しようとも、また立ち上がり走り続ける。人の幸せとは、案外そんな道々出会うものではないだろうか。」(p.462)