「人間小唄」, 町田康

 

小角が書き送った短歌を自分の文章に無断で引用した作家・糺田両奴。国民の無意識に影響を及ぼして駄目にする奴の文学を根底から破壊する!こちらの世界に拉致してきた糺田に課した難題は、「一、短歌を作る。二、ラーメンと餃子の店を開店し人気店にする。三、暗殺」。それは魂のテロルの始まりだった。

 

【印象的な表現や文章】

「はっきり云ってヒトは腹が減ると不機嫌になる。愛、平和、なんてな寝言は、腹がいっぱいだからこそ云える戯言である・・・」(p.28)

 

「仕事というものはなんでもそうだが、真っ直ぐに向き合い、全力で取り組まなければならない。」(p.29)

 

「家事、育児、労務問題、財政問題。いろんな問題をみんな抱えている。僕も抱えている。でも、そんなことは相対的なことだと思って、自分自身が愉快に生きる、楽しく生きる。そのことだけを考え、一瞬を楽しもう。」(p.50)

 

「しかし、実るほど頭を垂れる稲穂かな、人間というのは成功すればするほど謙虚であらねばならない。」(p.163)

 

「町々の時計となれや小商人、なんてなことが言ってあるとおり、ああした商売は休んだら終わりである。偏在。風景のようにそこにあらねばならない。そのことによって個が圧殺される、とか、自分らしさ、なんてなことを一瞬でも思ったら、その瞬間、終わる。」(p.173)

 

「もとより、大衆のニーズに応じた商品を提供するというのはそれが娯楽作品である以上、当たり前の話である。しかし、リサーチの結果に基づいた規格の多くは失敗する。なぜか。まず、・・・」(p.197)