「半島を出よ」, 村上龍

 

<上巻>

【印象的な表現や文章】

「商工の会社にたとえると、利益が上げられなくなった会社が利益を上げようとしないで社則を改正するのと同じです。日本は治療する勇気を持てなかった死にゆく巨象です。」(p.56)

 

「名前を言いたくない人間がいるのがそんなに変なことなのだろうか。きっと名前を言わない人間が恐いのだろう。だから、名乗ることは屈服の第一歩なのだ。」(p.78)

 

「詩人は一言で万人を打ち負かすのだとヤマダは思った。」(p.220)

 

「わかりきったことだが、最優先事項を決めなければいけないのだ。」(p.290)

 

「暴力で支配されて自らの生死に関わる運命を握られているとき、人間は本能的に支配者に好かれようと努力し、自分も支配者を好きになろうと努力するのだそうだ。」(p.399) 

 

 

<下巻>

【印象的な表現や文章】

「何かを見捨てようとしている人間は、そのことに触れようとしないものだ。」(p.56)


「メンツをつぶされた人間は恨みを持つ。恨みは陰謀や反抗の芽になる。」(p.134)

 

「コツというのはありません。自分で考えるのですから、そのことに関する助言はしません。他の人からの助言に頼ってしまうと、自分で考えなくなるでしょう。まず最初に自分で考えるのです。まず最初に他の人の助言を聞くのはダメです。」(p.145)

 

「統治や政治というものは、力の弱い少数者を犠牲にする装置を最初から内包しているのだ。」(p.174)

 

「イシハラは、あいつらは寂しいから真剣に叱ってやると喜ぶんだとシノハラに言ったことがあった。何のために生きるのかわからないで生きるなんて、そのへんのオヤジとかサラリーマンとか会社員とかおじさんとか公務員と同じじゃないか」(p.282)

 

「自分たちの周りにある命だけが尊いのだ。そういった腐った大人たちから正しいから生きろと言われても子どもは何のことかわからない。」(p.374)

 

「自分が絶対だと思っている人は死に向かい合ったとき恐怖で錯乱するだろう。」(p.422)

 

「・・・楽しいというのは仲間と大騒ぎしたり冗談を言い合ったりすることではないらしい。大切だと思える人と、ただ時間をともに過ごすことなのだそうだ。」(p.493)