「土佐堀川 広岡浅子の生涯」, 古川智映子

 

豪商三井家から17歳で大阪の両替商・加島屋に嫁いだ浅子は、家運が傾くと持ち前の商才を発揮、「九転十起」の精神で難局を切り開き、大阪随一の実業家として大成する。晩年は女子教育にも力を注ぎ、日本初の女子大学開設に奔走。歴史に埋もれてきた不世出の女性実業家の生涯を、初めて世に紹介した名作が、待望の文庫化。

 

【印象的な表現や文章】

「商売上手は、一に才覚、二に算用、そして三には始末である。」(p.28)

 

「世の中の変わり目いうのは、商人にとっては恰好の舞台になるもんや。必ず新しい商いが出てくるわ。先への判断がつくかどうか。何というても情報集めが先決や」(p.36)

 

「ほとんどの人間は自分の損得優先の論理によって支えられている。大義名分と実利とが一致すると時、初めて人は動く。」(p.145)

 

「金は、扱う人の器量の大きさにしたがって動く。不思議なものですな。」(p.181)

 

「感情的になったかて事態はようなりまへん。現実は冷静に受け止とめなあかんのどす。振り出しに戻って考え直しまひょ」(p.229)

 

「本ばかり読んで、世の中から遠ざかったら何もならへん。本の虫になって、常識ない人間になってはあかんで。生きた学問せなあかん。」(p.234)

 

「第一に、成功の秘訣は、その人に活力があるかどうか、その有無にかかっている。強い活力を持っていれば、それが仕事に反映し、生き方にも表れてくる。成功者は例外なく人に倍する活力を有している。」(p.269)

 

「乞食根性はあかん。うちの最も嫌いなものや、他人から何かしてもらう。それを当たり前に思うのはあかん」(p.291)

 

「人をあてにするだけの怠け者に金をあげるのは、慈善事業も笊から水が漏るようなもんや」(p.292)

 

「自分で出逢うた悲しみ、苦しみをこやしにして、どこまで這い上がれるか、勝負や。忍耐づよう努力を積めば、かならず道は開ける」(p.315)