「流星ワゴン」, 重松清

 

死んじゃってもいいかなあ、もう・・・。38歳・秋。その夜、僕は、5年前に交通事故死した父子の乗る不思議なワゴンに拾われた。そして------自分と同い年の父親に出逢った。時空を超えてワゴンがめぐる、人生の岐路になった場所への旅。やり直しは、叶えられるのか------?「本の雑誌」年間ベスト1に輝いた傑作。

 

【印象的な表現や文章】

「「なにも知らない」のと「すべてを知っていて、なにもできない」のは、どちらが不幸せなのだろう------と考える僕がいることすら、一年前の僕は知らない。」(p.96)

 

「分かれ道は、たくさんあるんです。でも、そのときには何も気づかない。気付かないまま、結果だけが、不意に目の前に突きつけられるんです」(p.123)

 

「見栄張ってどないするんな。ひとに使われとるけえ、捨てられるんじゃろうが。」(p.284)

 

「逃げていいんだよ。逃げられる場所のあるうちは、いくらでも逃げていいんだ」(p.362)

 

「親にとってなによりもつらいのは、子どもが悲しんでいることではなく、子どもが悲しみを自分一人の小さな胸に抱え込んでいることなのだと、僕はやり直しの現実で知った。」(p.406)

 

「権威主義の家父長と、よそよそしい母親とに苦しんだ子どもは、「並外れて愛情深い」父親になる。ところが今度は、このやさしい父親の子どもたちは彼を厳しく裁く。父親が妻の尻に完全に敷かれているように見えるからである」(p.473)