「思考の整理学」, 外山滋比古

 

アイディアが軽やかに離陸し、思考がのびのびと大空を駆けるには?自らの体験に則し、独自の思考のエッセンスを明快に開陳する、格好の入門書。考えることの楽しさを満喫させてくれる本。文庫本のあとがきに代わる巻末エッセイ”「思われる」と「考える」”を新たに収録。

 

【印象的な表現や文章】

「努力をすれば、どんなことでも成就するように考えるのは思い上がりである。努力しても、できないことがある。それには、時間をかけるしか手がない。」(p.41)

 

「倉庫型の頭をつくるのならともかく、ものを考える頭を育てようとするならば、忘れることも勉強のうちだ。忘れるには、異質なことを接近してするのが有効である。学校の時間割はそれをやっている。」(p.119)

 

「なぜ、いちばんよくわかっているはずの目の前のことがそれほどわからないのか。ひとつには、それまでの考え、それにもとづく流行の色眼鏡をかけて見ているからである。まわりがひとしくかけている眼鏡をはっきり一時的なものと看破することは難しい。そのメガネ越しでは、新しいものがあらわれても見えない。たとえ見えても、怪奇な姿にうつるであろう。とうてい真の価値を見ることはできない。」(p.123)

 

「はじめは勉強すればするほど知識の量も増大して能率があがるが、かなり精通してくると、壁に突き当る。もう新しく学ぶべきことがそれほどなくなってくる。なによりもはじめのころのような新鮮な好奇心が失われる。初心忘るべからず、などと言うのは無理である。」(p.129)

 

「友には、ほめてくれる人を選ばなくてはいけないが、これがなかなか難しい。人間は、ほめるよりもけなす方がうまくできている。いわゆる頭のいい人ほど、欠点を見つけるのがうまく、長所を発見するのがへたなようである。」(p.149)