「人間の基本」, 曽野綾子

人生を無駄にしないために必要な足場、それが人間の基本である。末端ばかりを大切にする時代にあって、それがなければ、周りに流され、やがては自分を失い、死んでしまうこともある。ルールより常識を、附和雷同は道を閉ざす、運に向き合う訓練を・・・常時にも、非常時にも、どんな時代でも生き抜くために、確かな人生哲学と豊かな見聞をもとに語りつくす全八章。

 

【印象的な表現や文章】 

「思想というものは、自分自身の生活と体験によってしかがっちり捕まえることはできませんし、知識だけで人生を渡っていくのは無理な話です。」(P.11)

 

「・・・携帯電話やパソコンを何時間操作したところで、そこからはっきりした目的のあるプロダクティビティ(生産性)はほとんど生まれない、ということです。物知りにはなりますが、知識というものは方向性を持たせて集約しないと、あまり役に立たないでしょう。」(P.13)

 

「どんな状況でも自分の頭で考え、想像し、工夫して生きることが人間の基本だと私はずっと思って来ました。」(P.33)

 

「人間の自由には常に制限や義務が伴う。」(P.49)

 

「修羅場を乗り越えた経験がないと、人間としての脆さがついて廻ります。」(P.115)

 

「常時ばかりではなく、非常時にも対応できる人間であるために、その基本となるのは一人ひとりの人生体験しかありません。強烈で濃厚で濃密な体験、それを支える道徳という名の人間性の基本、やはりそれらがその人間を作り上げるのです。」(P.191)